アメモノウォッチャー

アメリカ在住者がご当地の気なるモノをピックアップし、ご紹介します。

フォークフェス参戦

あろうことか、今年のアメリカでの音楽フェス最大の目玉になるはずだった、ウッドストック50周年記念フェスが中止となりました。

チケットゲットを今か今かと待ちわびていた身としては何とも残念至極な結果です。

まあ、以前から主催者側の準備不足がいろいろ取りざたされていましたが、あれほど錚々たるメンツを集めておいて、よもやキャンセルはないだろう、なんとか実施にこぎつけてくれるだろうと、あさはかな期待を抱いておりました。

でも危惧は現実化してしまったのです。15万人規模の一大祭典ですから、何年も前から準備をしていたはずなのに、のちの報道を聞くと、資金繰りもずさん、会場となる用地の確保もままならず、スタッフを動かす運営陣のリーダーシップも全く機能していなかったというのですから呆れます。土壇場に至っては開催地変更案が急浮上したり、挙句の果てはフリーコンサートになるのでは、という噂まで流れてしまいました。ありえないけどもしそうなったら、収拾のつかない大異常事態に発展していたでしょう。

とにかくこんないい加減な企画だと知って、開催直前に中止となってまだよかったような気がします。

まあアメリカっちゅうところはこういった、勢いで巨大プロジェクトをぶち上げて、途中で頓挫するというパターンはままありがちなことで、今回はそのいい例になってしまったという結果です。

でもね、これで私の夏祭りは終わったわけではございません。

ふっふっふ。

こんなこともあろうかと、第二、第三の夏バケーション案を用意していたのです。

その一つを昨日、実現させてきました。

それが昨日まで三日間に亘って開催されていた「ファルコンリッジ・フォークフェスティバル」です。これはその字のごとく、フォークミュージックに特化した野外音楽の祭典です。

ウッドストックからほど近いところにある、ヒルズデールという町の広大な牧場で毎年八月に開催されるアメリカフォーク界最大規模の祭典で1988年から始まってかれこれ30年以上の歴史があります。有名無名合わせて40組前後のフォークシンガー、バンドが三日間、朝から晩までパフォーマンスを繰り広げます。とはいえ、本場アメリカでもフォーク人気ははるか昔に消えはて、毎度の祭典もさほど盛り上がるわけではありません。観客は気の向いたときに気に入った演奏を聴き、気が向いたら自ら持ち込んだギターやバンジョーで輪になって思い思いの楽曲を演じあうのです。観客が一体となって盛り上がるロックの祭典とは違い、フォーク特有の自由というか気ままというか、のんびりまったりした時と空間がその場を支配するのです。いいかえれば、とても解放感マックスな気分に浸れるリラクゼーションの場でもあるのです。日頃の気ぜわしいストレス発散にはもってこいですね。牧場の一角には三日間をテントで過ごすフォーク村が出現し、あったこともない人同士が音楽を通じて、和気あいあいと暮らすほのぼの感はたまらないです。とりわけ目立つのは70年代ヒッピーの生き残りみたいなお年寄りの群れで彼らが食べ物を分け合ったりしてるのを見ると、なんだはほのぼのとしたあの頃にタイムスリップしたような気分になるのです。

メインステージもフジロックのような大仰なものではなく、見世物小屋かサーカスのテントぐらいのものなのですが、それでも常時数千人の観衆が入れ替わりたちかわりコンサートを楽しんでいました。

私は一日みの参加でしたが、夕方の雨が止んだ直後で日も沈みかけるなか、数組の演奏に耳を傾けました。家族での参加でしたが、私はビニールシートを敷いて場所取り。みんなはいい匂いのする食事の屋台が並ぶ人込みへと吸い込まれていきました。

若草のにおいに包まれ、晴れ上がって夕日もきれいな大空の下で、ずーっと聴いたこともないアメリカンなフォークソングを聞き続けました。

ときおり高原の心地よい風が吹くと、自分がどこかに飛ばされていくのでは、などという錯覚に陥りました。帰ってきてからですが、いやあ、あれはあれですっごく極上の贅沢だったでは、とも思いました。

いやじつは、義理の兄のバンドがこのフェスの常連のパフォーマーで、三日間連続出演のちょっとした人気者なのです。彼らの応援に何年かぶりで入場したのですが、こんなんにいい雰囲気だったとははじめて気が付きました。

いやあ、行ってほんとによかったと思ってます。もちろん兄のバンド、かっこよかったです。観客もいっしょに歌ったり踊ったりして、拍手喝采で本当に盛り上がっていました。会場は真っ暗な星空の下でしたが、みんなの満足げな笑顔が見えるような空気感でした。

音楽って本当にいいものですね。

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広大な高原の牧場でライブ