アメモノウォッチャー

アメリカ在住者がご当地の気なるモノをピックアップし、ご紹介します。

あおりはアメリカにもあります

 ちかごろ、あおり運転のニュースがよく出ていますが、これって今始まったものじゃないですよね。もちろん昔からありました。クローズアップされるようになったのは、やはりドライブレコードカメラの普及によるものでしょう。ぼくも前面カメラのみのヤツをつけていますが、幸いいまのところ、あおり運転をカメラで捉えたことはありません。でもそれ以前には何度か、煽りっぽい運転を被ったことはあります。

 ええ、アメリカでもあおり運転でトラブルになるケースは少なくありませんよ。よくいきり立った二台の車が猛スピードで車を追い抜いてゆくシーンを見かけます。あいつらいつか事故るだろうなと冷ややかに見送ったりします。ただどうだろう、日本で報道されてるような、延々何キロメートルにも渡って付け回すような陰湿なものはあまり聞きません。瞬間的にガーッと来てすぐ去っていくような「あっ、怖ッ!」みたいな瞬間的なものが多いように思います。これは国民性みたいなものでしょうか。

 よくあるのは、たいていこちらが追い越し車線のときで、制限速度を遥かに超えた車が後ろから詰め寄ってくるものです。あれ気分悪いですよね。ぼくはすぐさま車線変更して道をゆずるのですが、見ているとなかなか譲らないドライバーも多いです。ライトを点滅させても微動だにしない。ぼくが後方の立場でも、なんでこいつ譲らんの? と苛立つことがあります。車の運転は人間性が出ると言いますが、普段物静かな人でも、ハンドルを握ると豹変する場合もあります。

 僕の友人でトラック運転手のAさんはその典型。人懐っこくて誰にでもです・ます調で話しかけるぱっと見、穏やかな人。でもある時、仕事ついでに途中まで彼のトラックに載せてもらったときのことです。ふつうに和やかに会話しながらも、ハンドルさばきがやけにシビアです。トラックは乗用車と比べると動きが緩慢なものですが、彼の反応はすごくキビキビしていて、空きあらば前の車を追い抜いて前面にでていきます。混雑してくると、Aさんの前に割り込もうとする車があるのですが、きっしり車間を詰めて入らせないように、ブロックします。逆に前の車がノロノロ運転だったりすると、「オラオラどかんかい」みたいな勢いでグイグイ詰め寄って押し切ろうとします。車間はときに五十センチに満たないほどまで接近しますから、これは前の運転手にとっては脅威でしょう。ぼくも高速などで真後ろに大型トラックに接近されてビビったことは何度かあります。ふとバックミラーをみると窓いっぱいにトラックの車体が迫っている様は、まるで進撃の巨人にいきなり遭遇したエレンたちのような気分です。

 ちなみにこの状況で反射的に思い出す映画は、スピルバーグ監督のデビュー作「激突」。あれは怖かった。大型トラックが逃げ場のない広大なアメリカの道路を延々と追い回すやつ。追い詰められる主人公の心理が乗り移るかのような、手に汗握る映画でした。

 ハンドルを握ると人の感情というものは普段よりも増幅されるものらしく、必要以上に焦ったり、憤ったりしがちなもの。極力自制しながら、客観的な判断で安全運転を心がけたいものです。