アメモノウォッチャー

アメリカ在住者がご当地の気なるモノをピックアップし、ご紹介します。

今年のアカデミー賞

第91回アカデミー賞の授賞式の模様、テレビで観ておりました。

総合司会者がいない、異例のオスカーということで興味津々でしたが、いきなりオープニングがロックバンドクイーンの演奏。代役のヴォーカルをアダム・ランバートが立派にこなしておりました。

今年は多種多様な作品がノミネートされており、どの作品が本命になるのか、だれが時の人となるのか、なかなか予想が難しかった回ではなかったかと思います。

ふたを開けてみると最優秀作品賞はいがいや「グリーンブック」に決定。

いい作品だとは聞いていましたが、まさか最優秀作品賞をとるとはちょっと意外でした。

私は未見ですけれど、ぱっと見、ふたりのおっさんが車でアメリカ南部を旅する地味な映画かなと思っておりました。主演のビゴ・モーテンセンもかつては「ロードオブザリング」でアラルゴンをかっこよく演じていましたが、この映画では風采の上がらない中年運転手の役。どうかなという感じで映画館に足を運ぶ気にはなれませんでした。

日本では3月から公開とのことですが、興行関係者の本音ではきっと、「スター誕生」か「ボヘミアンラプソディ」に賞を獲らせたかったでしょう。

個人的には脚色賞、作曲賞をとった「ブラック・クランズマン」が一等賞だったのですが、監督のスパイクリーのはしゃぎっぷり、お茶目さが光っていました。 あれは日本の北野武監督の立ち位置でしたね。

クリスチャンベールがチェイニー元副大統領を演じ、特殊メークによる変貌ぶりが話題になった「バイス」はアメリカならではの毒っけたっぷりの政治内幕ものですが、これも日本じゃコケる可能性大。脚本もよくできた映画で一押しなのですが、日本ではチェイニーって誰?って感じでしょうから、たぶん受けないでしょうねえ。

主演男優賞はフレディマーキュリー役のラミ・マレック。わたしはちょっと首をかしげました。ちっとも悪くはない演技ですが、ややオーバーアクションが気になりました。往年のクイーンファンはフレディってあんなにぎらぎらしてたっけ? と思うはず。ステージから離れた彼はもっと内省的な人じゃなかったかと思うのは私だけでしょうか。

式のパフォーマンスでクイーンに次いで圧巻だっかのが、ブラッドリー・クーパーとレディ・ガガのデュエット。主題歌賞を受賞したガガの感激ぶりもあわせて、いちばんエモーショナルな場面でした。

全体を通して感じたのは、アカデミー、ずいぶん間口を広げたなということです。

プレゼンターや候補者がじつに多種多様で、ちょっと前の白人中心主義的な色合いがすっかり薄れました。というか、世間の批判を気にして、かなり恣意的に黒人、スパニッシュ、東洋人を前面に押し出したショーになったのではないかと考えます。

多様性といえば、ネット配信で劇場作品を押さえてしまった異色作「ROMA」。アルフォンソ・キュアロン監督がこの一見地味な、スター不在の白黒映画で監督賞を受賞したのは大きな意義があると思います。今後もこのような佳作が世界中からハリウッドに押し寄せてくれると、アカデミー賞もより面白くなっていくのではないでしょうか。